新着

『群盗』(2014) 特集:もっと観るべき韓国映画 全作品解説⑤(文/岡本敦史)

解説記事 編集部 
『群盗』(2014) 特集:もっと観るべき韓国映画 全作品解説⑤(文/岡本敦史)
おかげさまで再生回数常時上位、今や不動の人気ジャンル、韓国映画。好評にお応えし、8、9、10月と怒涛の作品大量投下!初月となる8月は「これを見逃していたら勿体無さすぎる」という鉄板タイトルを10本、韓国映画に詳しいライターで編集者の岡本敦史さんにセレクトしてもらいました。

目次[非表示]

  1. 韓国時代劇とマカロニウエスタンを融合させた勧善懲悪娯楽活劇。時代考証の正確さや堅苦しい文芸調から解放され、反差別と反権力を高らかに謳う

韓国時代劇とマカロニウエスタンを融合させた勧善懲悪娯楽活劇。時代考証の正確さや堅苦しい文芸調から解放され、反差別と反権力を高らかに謳う

 19世紀半ば、朝鮮王朝末期。腐敗した役人や両班(ヤンバン=朝鮮の特権階級)に搾取され、民衆は貧困と飢餓に苦しんでいた。そんなとき、金持ちだけを狙う義賊団「智異山チュソル」が出没し、支配者層との熾烈な戦いを繰り広げていた。ひょんなことから義賊団に加わった青年トルムチ(ハ・ジョンウ)は、多彩な仲間たちに囲まれて武芸の腕を磨きつつ、冷酷な剣の達人である武官チョ・ユン(カン・ドンウォン)との宿命の対決に挑む!

 韓国時代劇とマカロニウエスタンを融合させた、ユン・ジョンビン監督渾身の痛快明朗娯楽活劇。「韓国映画らしからぬ」と言っても過言ではないほど、ここまでエンタテインメントに徹した時代劇も珍しい。作り手がとらわれがちな時代考証の正確さ、堅苦しい文芸調などからは潔く解放され、反差別と反権力を高らかに謳う勧善懲悪活劇になっているところも、本作の新鮮な魅力だ。マカロニウエスタンの古典『怒りの荒野』(1967)のスコアを引用し、『続・荒野の用心棒』(1966)のごとくガトリングガンをぶっ放し、さらに武侠映画の巨匠キン・フーの『侠女』(1971)顔負けの竹林ソードアクションまで展開する、ジャンル映画ファン泣かせの趣向が楽しい。クエンティン・タランティーノ作品の影響も匂わせるが、それ以上に、香港映画をはじめとするアジアン・アクション映画への愛を色濃く感じさせる。

 肉切り包丁を鮮やかに振り回すスキンヘッドの主人公(設定年齢18歳!)トルムチを演じるのは、ユン監督とは4度目のタッグとなるハ・ジョンウ。古来より被差別対象だった屠畜人から、刀さばきはそのままに民衆のヒーローへと転身するキャラ設定が魅力的だ。宿敵役には、これが4年ぶりの映画出演となったカン・ドンウォン。一瞬にして画面を支配するスターの華と流麗なソードアクションはさすがの一言。さらに、義賊団の首領を風格たっぷりに演じるイ・ソンミン、怪力&純情キャラのマ・ドンソク、紅一点にして誰よりもカッコいい弓の名手に扮したユン・ジヘほか、芸達者たちが結集したキャストは壮観。チョン・ドゥホン武術監督による創意工夫に富んだアクション演出も惚れ惚れするばかりだ。

 ヤクザを題材にした前作『悪いやつら』(2012)などで、ホモソーシャルな男性中心社会をシニカルな視点で見つめてきたユン・ジョンビン監督。しかし、本作では初めて率直に「清々しい男たち」を描き、一皮むけたような印象がある(もちろん、有害な男らしさ、抑圧的な家父長制への批判は本作にも込められている)。『群盗』での挑戦が、『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』(2018)の成熟に繋がったと言えるかもしれない。

©︎ 2014 SHOWBOX/MEDIAPLEX AND MOONLIGHT FILM ALL RIGHTS RESERVED.

Profile : 岡本敦史
ライター・編集者。主な参加書籍に『塚本晋也「野火」全記録』(洋泉社)、『パラサイト 半地下の家族 公式完全読本』(太田出版)など。劇場用パンフレット、DVD・Blu-rayのブックレット等にも執筆。
紹介作品は動画配信サービス「スターチャンネルEX」にて配信中!

この記事をシェアする

関連する記事

注目のキーワード

バックナンバー