まるで動くグラビア!『黄金の七人』&『続・黄金の七人 レインボー作戦』(文/江戸木純)

記事コンテンツ 編集部 
まるで動くグラビア!『黄金の七人』&『続・黄金の七人 レインボー作戦』(文/江戸木純)
公開当時の日本の小中学生男子を目覚めさせた“動くグラビア”。監督が当時の妻をいかに魅力的に撮るかだけを考えて撮った、はっきり言ってロッサナ・ポデスタを観るための映画。ゆえに、今見てもまったく色あせていない、ヨーロッパ犯罪映画史に残る快作。

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  1. 『黄金の七人』(65)
  2. 『続・黄金の七人 レインボー作戦』(66)

『黄金の七人』(65)


『黄金の七人』は1965年のイタリア、フランス、スペイン合作映画。“黄金”と”七人”がコンビを組んだ単刀直入かつ絶妙な邦題からすでに、黄金や財宝を巡る集団犯罪映画という匂いが漂う通り、暴力を一切使わず、頭脳と肉体を駆使した作戦で金塊を盗み出す7人(実質的には美女がもう1人)の窃盗団の大胆な犯行を軽快に描いた犯罪大活劇だ。

 道路工事を装いながら銀行の地下まで穴を掘って金塊を盗み出すという方法は、おそらくこの映画よりも以前から、数多くの犯罪小説や漫画、アニメーション等で何度も描かれていたはずの盗みの常套手段だが、その定番をリアリズムよりも劇画的なダイナミズムで痛快、明快に描きつつ、超セクシーな美女のアシストと裏切り、さらにお洒落なサウンドトラックというスパイスを加えて娯楽映画的要素特盛に仕上げたこの作品は、数ある泥棒映画の中でも最も成功し、人気の高い作品。また、後に続く多くの映画やテレビドラマ、アニメーションの数々に決定的な影響を与えた泥棒映画の古典的名作といえる。

 わかりやすいところでは、「ルパン三世」における数々の泥棒シーン、中でもロッサナ・ポデスタが演じるヒロインにして、敵か味方かわからない悪女でもあるジョルジャが、峰不二子のキャラクターのモデルであることは誰が見ても一目瞭然である。
 監督はマルコ・ヴィカリオ。俳優出身で50年代に『空挺部隊』(56)など20本以上の作品に出演、60年代にはプロデューサーに転身し、『ローマの崩壊』(62)などの史劇や『顔のない殺人鬼』(63)、『幽霊屋敷の蛇淫』(64)などのホラーで成功し、64年に妻のロッサナ・ポデスタ主演の『濡れた本能』で監督デビュー。この『黄金の七人』が2作目の監督作にして、プロデューサーとしてもキャリア最大のヒット作となった。

 ヴィカリオとポデスタは53年に結婚、76年に離婚するまで多くの作品でコンビを組んだが、中でもこの『黄金の七人』シリーズは、そもそもロバート・ワイズ監督の史劇『トロイのヘレン』(56)で主役に抜擢され、一躍注目を浴びたものの、似たような役柄ばかりで伸び悩んでいた妻を大きく売り出すことが目的だったといわれている。

 だから”七人”とはいっても、フィリップ・ルロワ演じる”教授”の指揮の下、実働部隊として金塊を盗み出す6人のキャラクターはほとんど掘り下げられず、その分、映画はポデスタ演じるヒロインのまるで動くグラビアのような見せ場が満載。ドレスというよりほとんど布といっても過言ではない衣装を身にまとったポデスタがほぼスクリーンを占領している。

 だが、結果的にポデスタを前面に打ち出した作戦は大成功で、とかくむさ苦しい男ばかりが奮闘する地味なイメージの泥棒映画に華を添えるどころか、目にも鮮やかな大看板となって映画を国際的な大ヒットに導いたのである。日本でも、映画の面白さ以上にロッサナ・ポデスタの攻撃的にセクシーな魅力の虜となった男性層は多く、特に当時の小中学生にはトラウマ級の強烈な刺激を与えて、当時の少年たちを目覚めさせ、教室での密かな話題となったという。
 そして、この作品を余多ある犯罪活劇とは別格の息の長いカルト的な人気作としているのが、アーマンド・トロヴァヨーリのサウンドトラックだ。

 トロヴァヨーリは1950年代から2000年代前半まで活躍し、幅広いジャンルの映画にバラエティ豊かな音楽を書いたイタリア映画音楽界の巨匠の一人だが、どうしてもエンニオ・モリコーネの陰に隠れ、日本での知名度はあまり高くない。ただ、ヴィットリオ・デ・シーカの『昨日、今日、明日』(63)や『あゝ結婚』(64)、エットーレ・スコラ作品のほとんどを手掛けるなどイタリア映画界にはなくてはならない存在で、熱狂的なファンも多い。

『黄金の七人』はトロヴァヨーリのジャズ・センスがさく裂した代表作の一つで、”イタリアーノ・チネ・ジャズ”とも呼ばれる6,70年代のジャズの要素が入ったイタリア映画のサウンドトラックの数々の中でも特に人気が高い。そのアルバムは映画音楽ファンだけでなく幅広い音楽ファンの間で傑作として知られていて初公開時からレコードが大ヒットし、90年代には”シブヤ系サウンド”のブームの中で人気が再燃、92年には日本版CDが発売され、94年にはそのサントラ人気に引っ張られるかたちで映画自体も正編、続編ともにリバイバル公開されて話題となった。

『続・黄金の七人 レインボー作戦』(66)

『続・黄金の七人 レインボー作戦』(1966)は、1作目の大ヒットを受けて同じスタッフ&キャストがすぐに製作に入り、イタリアでは1作目の4か月後に公開された。

 1作目のエンディングから始まる正式な続編だが、よほどヒットしたからか製作費は明らかに何倍にも増え、舞台はローマから南米某国へと飛び、独裁者を誘拐し、ソ連の原子力潜水艦に積まれた7000トンの金塊を狙うという標的も作戦もかなり無謀にスケールアップ。もはや単なる泥棒映画ではなく、脳波を映像化するモニターやジェット・フライング・チェアなど、ドラえもんもビックリの小学生的発想を具現化させたような、どうやって作ったかは全く不明の新型科学兵器が次々と登場するなど、007シリーズやナポレオン・ソロ等、当時大人気だったスパイ活劇まで意識した国際的冒険アクション大作となっている。
 ヴィカリオ監督の妻ポデスタを前面に出す方針はさらにエスカレートし、ポデスタは登場の度に衣装ばかりか、ヘアスタイルやコンタクトレンズを使用し、必然性とか説得力とか全く無視して目の色まで変えて登場。その七色の変化から、劇中にそんな作戦が出てくるわけではないのだが、邦題サブタイトルに”レインボー作戦”とつけられた。

 音楽はもちろん1作目に引続きアルマンド・トロヴァヨーリ。7割くらいは前作と同じだが、南米が舞台となるのでボサノヴァ調になったり、ソ連の潜水艦のシーンにはロシア風の曲がかかったりと遊び心満載で、音楽もスケールアップしている。

 物語の展開よりも次々と見せ場や新兵器が繰り出されるので、テンポよくコンパクトにまとまっていた1作目に比べ正直まとまりは全然ないのだが、圧倒的にポデスタ度が高まった分、「ロッサナ・ポデスタを見る映画」という視点かれすれば1作目以上に楽しめる。

『黄金の七人』シリーズには今回配信される『黄金の七人』と『続・黄金の七人 レインボー作戦』の他に、一人を除きキャストをほぼ一新した1作目のリブート版といえるマルコ・ヴィカリオ製作、ミケーレ・ルーポ監督、トロヴァヨーリ音楽の『新・黄金の七人 7×7』(1968)と、マルコ・ヴィカリオ製作&監督、トロヴァヨーリ音楽でヒロインがロッサナ・ポデスタの『黄金の七人 1+6 エロチカ大作戦』(1971)があるが、『~エロチカ大作戦』は、監督とヒロインが同じことから”黄金の七人”のヒットにあやかってつけられた邦題で、オリジナルとは何のつながりもなく、泥棒映画でもない艶笑コメディ。

 ヴィカリオ監督はその後、ポデスタとはジャンカルロ・ジャンニーニ共演の艶笑コメディ『あゝ情熱』(73)を撮るが、76年に離婚。ヴィカリオはその後ラウラ・アントネッリとマルチェロ・マストロヤンニ主演の『悦楽の貴婦人』(77)など数作を撮り、ポデスタは数本の艶笑コメディに出演するがしだいに活躍の場を失っていった。

 ヴィカリオの下ネタコメディばかりのフィルモグラフィを見ていくと、彼は監督としてアクション・エンタテインメントを作ることにはほとんど興味がなかったことがよくわかる。『黄金の七人』正・続編は、ヴィカリオが妻ロッサナ・ポデスタをいかに魅力的に撮るかだけを考えた”ポデスタ愛”映画として徹底して作ったからこそ、今見てもまったく色あせず華やかで面白い、ヨーロッパの犯罪映画史に残る快作になり得たのである。
Profile : 江戸木 純(えどきじゅん)
1962年生まれ。映画評論家、プロデューサー。配給会社エデン代表。『ムトゥ 踊るマハラジャ』、『ロッタちゃん はじめてのおつかい』などを日本に紹介。『王様の漢方』、『丹下左膳・百万両の壺』では製作、脚本も手掛けた。著書に「地獄のシネバトル」「世界ブルース・リー宣言」、共著に「映画突破伝」「日本映画最終戦争」などがある。「映画秘宝」「週刊現代」「ヴォーグ・ジャパン」「映画.com」などに執筆中。twitter.com/EdokiJun

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