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【『サニー 永遠の仲間たち』(2011) 特集:もっと観るべき韓国映画 全作品解説①(文/岡本敦史)】

解説記事 スターチャンネルEX 編集部
【『サニー 永遠の仲間たち』(2011) 特集:もっと観るべき韓国映画 全作品解説①(文/岡本敦史)】
おかげさまで再生回数常時上位、今や不動の人気ジャンル、韓国映画。好評にお応えし、8、9、10月と怒涛の作品大量投下!初月となる8月は「これを見逃していたら勿体無さすぎる」という鉄板タイトルを10本、韓国映画に詳しいライターで編集者の岡本敦史さんにセレクトしてもらいました。

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  1. 韓国映画に初めて触れる人に「まず観てほしい10本」を挙げるなら必ず入れたい作品

韓国映画に初めて触れる人に「まず観てほしい10本」を挙げるなら必ず入れたい作品

 韓国映画に初めて触れる人に「まず観てほしい10本」を挙げるなら、必ず入れたい作品だ。性別も国籍も、老いも若きも、あらゆる垣根を超えて人の心を掴み、こんなにも素直に楽しませてくれる映画はそうそう見当たらない。カン・ヒョンチョル監督の代表作であり、友情と連帯を描いた女性映画の逸品でもある。

 思春期のころに友情を育んだ少女たちの青春模様と、彼女たちが大人になって再会するドラマが交互に語られる――という構成自体は珍しくない。アメリカ映画『Dear フレンズ』(1995)はその原型としてよく言及される一作だ。本作独自の魅力はいくつもあるが、そのひとつが「ティーン女子の視点から捉えた1986年の韓国」という新鮮な作品世界にある。

 1986年といえば、ポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』(2003)の舞台にもなった年。軍事独裁政権の末期、国内各地で民主化運動が激化していた「激動の時代」である。一方、全世界的に浮き足立った80年代ポップカルチャーの波は韓国にも押し寄せ、巷ではアイドルソングが流行し、人々はハリウッド映画に夢中になった。そして、恋にオシャレに友情に大忙しなティーン女子の日常も、他の国々と同じように存在した……。『サニー 永遠の仲間たち』は政治的イデオロギーに左右されない視点で、その複雑な時代に生きた少女たちの青春を、活き活きと郷愁たっぷりに映し出す。

 日本やインドネシアなどアジア数カ国でリメイクされた本作だが、それぞれの作品には、その国でしか描き得ないものがある。韓国においては、女子グループ同士の火花散るバトルと、機動隊とデモ隊の激しい衝突を同時に描くシーンがその筆頭だ。背後に見えるのは『ロッキー4/炎の友情』(1985)の看板、そしてBGMはJoyの「Touch by Touch」。肌と肌の触れ合いを歌った刺激的ラブソングだが、映し出されるのは拳と拳のぶつかり合いというヒネリがおかしい。

 政治性に左右されないと書いたが、それでも武闘派少女ハ・チュナ(カン・ソラ)が仲間を助けるために機動隊員たちを躊躇なく蹴り飛ばしていく場面は、何度観ても痛快かつ感動的だ。それはまるで少女たちの貴重な青春を抑圧してきた、体制への怒りのキックにも見える。

 当時は新人だった女優陣のフレッシュな顔ぶれも、唯一無二のパワーを映画に与えている。主人公ナミの少女時代を演じたシム・ウンギョンは、いまや日本と韓国をまたにかけて活躍中。シンナー中毒の問題児サンミ役で強烈なインパクトを与えたチョン・ウヒは押しも押されもせぬ人気女優となり、彼女の主演作『雨とあなたの物語』(2021)ではカン・ソラが第二のヒロインとして久々に圧倒的存在感を示した。公開から10年以上経ったいまでも、まるで昔の親友を思い出すように、彼女たちの現在に思いを馳せずにいられない。そんな「心の1本」になりうる名作である。

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Profile : 岡本敦史
ライター・編集者。主な参加書籍に『塚本晋也「野火」全記録』(洋泉社)、『パラサイト 半地下の家族 公式完全読本』(太田出版)など。劇場用パンフレット、DVD・Blu-rayのブックレット等にも執筆。
紹介作品は動画配信サービス「スターチャンネルEX」にて配信中!

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